2023年7月13日以降の事件は「不同意性交等罪」に問われます。
このページでは、強姦事件の法定刑、着手時期、既遂時期、既遂と未遂の刑罰の違いについて解説しています。
不同意性交等罪とは(R5.7.13~)
法定刑 | 5年以上の有期拘禁 |
---|---|
着手時期 | 不同意性交等罪の客観的な危険性が認められる行為を開始した時点 |
既遂時期 | 性交等を行った時点 |
成立要件 | 不同意性交等罪の構成要件に該当し、違法性阻却事由がなく、責任能力が認められる場合 |
強制性交等罪とは(~R5.7.12)
法定刑 | 5年以上の有期懲役 |
---|---|
着手時期 | 手段としての暴行又は脅迫を開始した時点(13歳未満の者に対する強制性交等の場合は、性交等に至る客観的な危険性が認められる行為を開始した時点) |
既遂時期 | 性交等を行った時点 |
成立要件 | 暴行又は脅迫を用いて13歳以上の者に性交等した(又は、13歳未満の者に性交等した) |
既遂と未遂の法定刑
不同意性交等罪の場合、既遂の法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。また、強制性交等罪の既遂の法定刑は、5年以上の有期懲役です。
有期の下限は、1月以上です。不同意性交罪にしろ、強制性交等罪にしろ、強姦事件の刑期は1ヶ月以上20年以下となります。
強姦事件は未遂の場合も成立します。未遂とは、強姦事件に着手したが、既遂に達しなかった(性交等をおこなうまでに至らなかった)場合を言います。
未遂罪の場合は、法律上、刑を減軽できる旨が定められています。
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
刑法43条
法律上の減軽の方法は、懲役刑の長期及び短期を2分の1に減じる方法で行われます。
すなわち、強姦事件の未遂の刑は、強姦事件の既遂の場合と比べて、刑の長期及び短期が半分になる場合があります。既遂と未遂とでは、刑の重さに非常な違いが出ることになるのです。
強姦はいつ既遂になるか
既遂
では、強姦事件はいつまでが未遂であり、いつから既遂になるのでしょうか。
強姦事件の未遂と既遂とを分けるのは、性器を女性器・肛門・口腔に挿入したか(または挿入させたか)どうかです。性器を一部挿入した(させた)だけでも、既遂となります。一部でも挿入しさえすれば、射精しなくても既遂になります。
もっとも、男性器が女性器・肛門・口腔に接触しただけでは、挿入とはなりません。
既遂になる時期
- 不同意性交等罪の場合(R5.7.13以後の強姦事件)
性交、口腔性交、肛門性交、膣・肛門への陰茎以外の挿入のいずれかをおこなった時点で既遂罪となる - 強制性交等罪の場合(R5.7.12以前の強姦事件)
性交、口腔性交、肛門性交のいずれかをおこなった時点で既遂罪となる
未遂
一方、たとえば、暴行または脅迫によって、性交等をする犯行計画をたてたとしても、まだ相手方に対して暴行または脅迫を行なっていない段階では、強制性交等罪の実行に着手すらしていないので、未遂にはなりません。
強姦事件の既遂・未遂に執行猶予はつけられるか
では、強姦事件の既遂・未遂それぞれの場合に、執行猶予はつけられるでしょうか(ここでは、1度目の執行猶予を想定します)。
執行猶予をつけるためには、言い渡される刑が、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金である必要があります。
ここで強姦事件の刑期は、5年以上20年以下です。つまり、強姦事件では、刑が減軽される例外的な事情がない限り、原則として執行猶予はつきません。
一方、強姦事件の未遂のケースでは、未遂による法律上の減軽が認められた場合に、刑期が3年以下になる可能性があります。刑期が3年以下になれば、執行猶予がつく可能性があります。