【事実の概要】

強姦罪で起訴された被告人が強姦罪(刑法177条)の憲法14条違反を主張した事件。刑法第177条には、暴行又は脅迫を以て13才以上の婦女を姦淫したる者は強姦の罪と為し云々と規定されている。即ち本条に於て保護されるものは婦女の貞操であり結局婦女が其の対象となる。そうすると憲法第14条のすべての国民は法の下に平等であつて人種、信条、性別、社会的身分又は門地により政治的経済的又は社会的関係において差別されないという規定と如何にして調和するかという点が争われた。
【判旨】

刑法177条は、「暴行又ハ脅迫ヲ以テ13歳以上ノ婦女ヲ姦淫シタル者ハ強姦ノ罪ト為シ2年以上ノ有期懲役ニ処ス13歳ニ満タサル婦女ヲ姦淫シタル者亦同シ」と規定し、強姦罪の成立には刑法上その客体を婦女のみに限つていること並びに憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定していることは、所論のとおりである。しかし、右憲法14条1項の規定が、国民を政治的、経済的又は社会的関係において原則として平等に取り扱うべきことを規定したのは、基本的権利義務に関し国民の地位を主体の立場から観念したもので、国民がその関係する各個の法律関係においてそれぞれの対象の差に従い異る取扱を受けることまで禁ずる趣旨を包含するものでないこと、並びに、国民の各人には経済的、社会的その他種々な事実的差異が現存するのであるから、一般法規の制定又はその適用においてその事実的差異から生ずる不均等があることは免れ難いところであり、従つて、その不均等が一般社会観念上合理的な根拠のある場合には平等の原則に違反するものといえないことは、夙に当法廷の判例とするところである。(前者につき判例集4巻10号2040頁後者につき同巻6号961頁参照)。
そして、刑法が前記規定を設けたのは、男女両性の体質、構造、機能などの生理的、肉体的等の事実的差異に基き且つ実際上強姦が男性により行われることを普通とする事態に鑑み、社会的、道徳的見地から被害者たる「婦女」を特に保護せんがためであつて、これがため「婦女」に対し法律上の特権を与え又は犯罪主体を男性に限定し男性たるの故を以て刑法上男性を不利益に待遇せんとしたものでないことはいうまでもないところであり、しかも、かかる事実的差異に基く婦女のみの不均等な保護が一般社会的、道徳的観念上合理的なものであることも多言を要しないところである。されば、刑法177条の規定は、憲法14条に反するものとはいえない。それ故、本論旨も採用できない。