【事実の概要】

被告人は,夜間,ダンプカーに友人A(少年)を同乗させたうえ,女性と情交を結ぼうとの意図のもとに徘徊走行中,通行中のX 女を認めるや,「車に乗せてやろう」などと声をかけながら約100 m 尾行したものの,まったく相手にされないことに苛立ったA が下車して同女に近づいていくと,付近の空地に車を止めて待ち受け,A が同女を背後から抱きすくめてダンプカーの助手席前まで連行して来るや,A が同女を姦淫する意図を有することを察知し,ここにA と強姦の意思を相通じたうえ,必死に抵抗する同女をA とともに運転席に引きずり込み,発進して約5 km 離れた護岸工事現場に至り,運転席内で同女の反抗を抑圧してA,被告人の順に姦淫したが,同女を引きずり込む際の暴行により全治約10 日間の傷害を負わせたとして,強姦致傷罪で起訴されたものである。 第1 審(山口地判昭和44・1・22 刑集24 巻7 号590 頁参照)は,被告人につき強姦致傷罪(刑181 条・177 条前段)の共同正犯(刑60 条)を認めて懲役3 年(A は少年院送致)に処し,原審(広島高判昭和45・3・3 前掲刑集591 頁参照)もこれを維持した。被告人は,強姦の着手時点は護岸工事現場に連行したとき以後であり,X 女の負傷はダンプカー乗車の時に受けたもので強姦着手前であるから,強姦罪と傷害罪との併合罪で処断すべきであるとして上告した。
【決定】
本件上告を棄却する。弁護人小河正儀の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。なお、原判決ならびにその維持する第一審判決の各判示によれば、被告人は、昭和四三年一月二六日午後七時三〇分頃、ダンプカーに友人のAを同乗させ、ともに女性を物色して情交を結ぼうとの意図のもとに防府市内を俳徊走行中、同市ab丁目付近にさしかかつた際、一人で通行中のB(当時二三歳)を認め、「車に乗せてやろう。」等と声をかけながら約一〇〇メートル尾行したものの、相手にされないことにいら立つたAが下車して、同女に近づいて行くのを認めると、付近の同市cb丁目赤間交差点西側の空地に車をとめて待ち受け、Aが同女を背後から抱きすくめてダンプカーの助手席前まで連行して来るや、Aが同女を強いて姦淫する意思を有することを察知し、ここにAと強姦の意思を相通じたうえ、必死に抵抗する同女をAとともに運転席に引きずり込み、発進して同所より約五、〇〇〇メートル西方にある佐波川大橋の北方約八〇〇メートルの護岸工事現場に至り、同所において、運転席内で同女の反抗を抑圧してA、被告人の順に姦淫したが、前記ダンプカ―運転席に同女を引きずり込む際の暴行により、同女に全治まで約一〇日間を要した左膝蓋部打撲症等の傷害を負わせたというのであつて、かかる事実関係のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があつたと解するのが相当であり、また、Bに負わせた右打撲症等は、傷害に該当すること明らかであつて(当裁判所昭和三八年六月二五日第三小法廷決定、裁判集刑事一四七号五〇七頁参照)、以上と同趣旨見解のもとに被告人の所為を強姦致傷罪にあたるとした原判断は、相当である。その他、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。